石 橋   しゃっきょう    SYAKYO

熊本花菖蒲   中早生   小豆紅の六英正花。花径はおよそ18cm程度の大輪。
草丈は低く50cm程度。性質、繁殖は普通。

熊本花菖蒲の古花の一つで、明治時代に熊本満月会会員の吉田可輝氏によって作出され、熊本で
の名前は「旭 山」と言った。独特のややくすんだ紅紫で、「業平」のような冴えた紅色ではない。

色調、弁質ともに壮重な能役者の衣裳やしぐさを連想させ、その昔熊本花菖蒲が門外不出であった
頃、数ある品種の中でも特に厳重に守られたとされる格式のある名花である。
作者の吉田氏は吉田潤之助の末裔で、潤之助という人物は、江戸時代末期に菖翁に入門して花菖蒲
の栽培を学んだ、熊本での花菖蒲の始祖である。満月会では、この吉田家を代々の会長としている。

熊本花菖蒲の古花の中には、熊本での名前と、熊本以外での名前とが異なっている品種が存在する。
これは、西田衆芳園が熊本花菖蒲を横浜で販売する際に、名称を変更して販売したことに拠る。


こんにちの一般的な感覚からすれば、草丈は低く、咲き揃う性質もなく、また色彩も冴えてはいない。
こういう花は、その花の持つ歴史を知った上で観賞しなければ、その良さを味わうことなどできない。