小野道風   おののとうふう   ONO NO THFU

肥後系   中生   白地に紫の砂子と紫脈の入る六英花。花径はおよそ18cm程度の大輪。
「葦の浮船」や[池水の綾」などと同じ、白地に紫脈の入る肥後系のタイプ。
1968年、光田義男作
   


肥後系の元となった熊本花菖蒲は、江戸時代の末期より熊本で改良されたが、江戸花菖蒲が花色や花形とも多彩である
のに対し、熊本花菖蒲では紫、紅紫、純白の無地花の占める割合が高い。これは、室内での観賞を目的にしたため、紫と
白の花以外は、細かな色彩変化があっても室内の薄明るい光の中では解りづらいなどの理由もあったと思われる。また、
厳格なまでに花形に精神性を求めたため、色彩による悪く言えばごまかしを嫌ったのではないだろうか。熊本で改良された
熊本花菖蒲は、花形こそ改良されたが、花色については改良されたとする記述がないように思う。

光田氏はその点に着目し、その色彩変異の幅を広げるべく改良を重ね、それまでの肥後系(熊本系)になかった、
ピンク系や砂子系の花を作出されたが、この白地に紫脈の入る系統もその一つである。このパターンの花も、熊本では
嫌われたのか、全く作出されなかった。