ノハナショウブ   青森県尻屋崎自生  

青森県では北海道と同じく、海岸砂丘より一歩内陸に入った草原地帯にノハナショウブが多く見られた。
この写真は青森県の下北半島の北端の尻屋崎で撮影したものだが、ほとんど紅紫色の花ばかりだったが、
この画像のようにくすんだ藤紫色の花を咲かせる個体も見られた。開花時期は7月10日前後。

この場所は海に突き出した岬の草原で、寒立馬(かんだちめ)という馬が放牧されていることでも有名な場所で
ある。ノハナショウブを含めアヤメ科の植物は、葉が渋いためか動物も食べず、例えばヒオウギアヤメなどは、
道東の牧草地でもよく見られる。

北海道産も含めて、北日本に自生するノハナショウブは、総じて個体変異が少なく。濃い赤紫色の花が
殆どである。草丈は低くて40cmから、高くて80cmくらいだったが、個体差というよりも、生えている環境で、
例えば牧草地などで、家畜の糞が養分となっているようなところでは、草丈も高く大型化して、株も分かれ
大きくなっていた。

また、栽培してみると、本州の高原地帯に自生しているノハナショウブよりずっと強健で、栽培下でもよく
増殖する。推測だが、青森県から北は、氷河時代に自生していた個体が全て絶えて、氷河が終わった後に
あらためて分布を広げていった地域ではないかと考えられる。そのため個体差が少なく、性質の強健な
個体の子孫が多く繁殖して、分布を広げたのが現在の状況ではないだろうか。