ノハナショウブ   北海道天塩自生     

99年7月18日撮影。日本海側の天塩町の海岸沿いを走る国道の脇で群生していた。

東海地方に住む私は、自生するノハナショウブを見たいと思った場合、車で朝霧高原へ行くとか、
霧ケ峰に行くとかが普通で、自生地へ行っても個体数は少なく、それを貴重品でも見るような目で
眺めている。
それが、北海道の海岸地帯では、草原をいろどるありふれた花として、無数に咲いている。

   


ノハナショウブと氷河
シベリアや北海道や東北のノハナショウブは、花色も殆ど紅紫一色で、変異が少ない。それより南の
地域に自生する個体が地域ごとにある程度変異があるのに比べ対照的である。また、性質は丈夫で
栽培下でもよく繁殖するが、この違いはどこから来るのだろうか。

その一つの解答として、東北から北海道、そしてシベリア極東部に自生するノハナショウブは、氷河期に
氷の下になり一度絶滅した地域に、氷河期以降に性質の丈夫な個体が大量に、そして広範囲に繁殖した
ものであるという仮説が考えられる。だから変異の幅が狭く、海水によってタネが伝播しやすい海岸地帯に
自生が多いのではないだろうか。。これに対し、東北以南は氷河を免れることができたので、氷河期よりさら
に古い時代からの個体の子孫が、絶滅することなく受け継がれ、山野に広く分布を広げ、そうする中で、少し
づつ変異の幅が広がって来たのではないかと推測される。


現在色とりどりの花菖蒲が見られるのは、この氷河が日本の東北地方以南に来なかったことによるものなの
だろうか。自生地で花を眺めながら、ふとそんなことを思う。