ノハナショウブ   青森県小川原湖畔自生   

青森県では北海道と同じく、海岸砂丘より一歩内陸に入った草原地帯にノハナショウブが多く見られた。
この写真は三沢市の小川原湖畔で撮影したものだが、タイプ的には北海道産とよく似ている。

北海道産も含めて、北日本に自生するノハナショウブは、総じて個体変異が少なく、濃い赤紫色の花が
殆どである。草丈は低くて40cmから、高くて100cmくらいだったが、個体差というよりも、生えている環境で、
例えば牧草地などで、家畜の糞が養分となっているようなところでは、草丈も高く大型化して、株も分かれ
大きくなっていた。

98年に訪れたときは、三沢から六ヶ所そして下北半島の先端まで、ちょっとした草地などにたくさん自生して
おり、車窓から見つけるのもたやすかった。私の住む東海地方にも、昔は生えていたというが、都市化のため
もう全く見ることはできなくなっている。田んぼの畦などに雑草のように生えているところもあったが、もともとの
花菖蒲の生育適地なのだろう。それがとても羨ましく思えた。


また、栽培してみると、青森や北海道産の草は、本州の高原地帯に自生しているノハナショウブよりずっと
強健で、栽培下でもよく増殖する。推測だが、青森県から北は、氷河時代に自生していた個体が全て絶えて、
氷河が終わった後にあらためて分布を広げていった地域ではないかと考えられる。そのため個体差が少なく、
性質の強健な個体の子孫が多く繁殖して、分布を広げたのが現在の状況ではないだろうか。


ともあれ、野原に無数のあやめが咲く姿は、栽培品の花菖蒲を見るのとはまた違って、とても気分がいい。