羽 衣   はごろも   HAGOROMO

肥後系   晩生   白地に明るい藤色のぼかしと白筋の入る八重。花径はおよそ18cm程度の大輪。
草丈は100cm程度には伸びる。性質、繁殖は普通。

戦前に広島の精興園という種苗会社が作出した品種。花弁があまり波打たず丸味がある。平尾先生の
「千鳥」や「雪千鳥」、「雪灯篭」などの親にあたる品種である。平尾先生は、自分の改良した肥後系は、
精興園の品種と衆芳園の品種をただ掛け合わせただけだと話されていた。系統の違う肥後系を交配し
たことで、雑種強性で先生の肥後系は花菖蒲園にも向く丈夫で優秀な系統であった。それらの品種が
戦後の花菖蒲ブームの立役者になった。そういう意味で、精興園の花菖蒲改良は重要といえる。

しかし、この精興園は戦前にどこから熊本花菖蒲を入手して品種改良を行ったのか、わからない。
満月会の品種を持ち出したのは、衆芳園だけではなかったということなのか。今となってはわからない。

ただ、この花は、やわらかな雰囲気を持ち私は「千鳥」よりむしろこちらの方が好きである。よく普及
した品種なので、方々の花菖蒲園でまだ健在だと思うが、当園では売り切ってしまったようで、また
どこからか入れなければならないと、この花を思い出すたび思うのである。